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デルサルトってどんな人?

" アレクサンダー・テクニーク "

2018年4月11日

こんにちは!ハリ弟子です。

 

先日、アレクサンダー・テクニークの源流として、デルサルト・システムというものを紹介しました。

 

システムそのものがどんなものかはよく分かっていませんが、デルサルト自身の生涯や考えていたことは少し記録が残っていて、ネット上でアクセスできるものもあります。

 

参考にしたテキストは、19世紀アメリカでシステムをひろめたステビンスによる”Delsarte System of Expression”です。

 

この本の冒頭に、デルサルト本人の講演が収録されています。

 

元々は仏語の手書き草稿だったものを英訳して載せたようです。

 

また、フランク・ヴァイユというフランスの研究者の論文に、デルサルトの一生を記した年表がついています。

 

今日は、そうしたものを手がかりにシステムが作られた背景にある思想に迫りたいと思います。

 

フランソワ・デルサルト

デルサルトは、その才能を見出されて14歳でパリ・コンセルヴァトワールへの入学を許可されます。

 

しかし、在学中に喉の不調を起こし、18歳の時に学業終了を宣告され「田舎に帰って畑でも耕したらどうか」と勧められます。

 

その後もしばらくはいくつかの劇場で役をもらったりして、歌手として活動しようとしましたが、20歳の時に歌手をやめて、声を取り戻すための研究と教育に専念することに決めました。

 

1832年のことです。

 

それから8年以上の間、親しい友人にさえも歌って聞かせることはなかったと言います。

 

喉の不調の原因となったコンセルヴァトワールの教育について、デルサルトはかなり辛辣です。

 

What passes, then, in the Conservatory? In that school there reign, without control as without contest, arbitrariness and contradiction ; there, one finds that the antagonism of masters, each one convinced of his own omnipotent infallibility, because he draws only from himself, and his judgments are without appeal, creates an anarchy, the excesses of which they do not even dream of repressing. There, in effect, all the law rests upon the opinion of the master ; all the science dwells in a confused mass of prescriptions and examples that no principle comes to support. Fantasy imposes them, ignorance conforms to them ; and the pupils, condemned to mechanically reproduce them, are hardly anything else at the end of their course than the servile copyists of a master without doctrine. No judicious mind will accuse me of characterizing with too much stress such sterile instruction. Slavery is at the root of it; and this slavery opposes the greatest obstacle to that elevation of character and idea, which should belong to the artist. This blind reproduction, which collects the knowledge of men living in frozen art-zones, paralyses and dries up all which nature and a vocation have given to the artist of instinct, of intelligence, and of heart.

(XXXII, Address of François Delsarte before the Philotechnic Society of Paris, translated from unpublished manuscripts, from Genevieve Stebbins “Delsarte System of Expression” 1885)

コンセルヴァトワールで何が起こっているか?あの学校は、コントロールもなく批判を受けることもなく、恣意的で矛盾に満ちている。

そこでは実際、師匠の意見が絶対だった。

そして生徒は、機械的に師匠の真似をするように責められ、課程を修了する頃には教義なき師匠の奴隷的なコピー以外のなにものでもなくなってしまう。

(抄訳:太字部分のみ)

 

当時の芸術家の教育は、言葉の悪い意味での徒弟制だったようです(少なくともデルサルトにとっては)。

 

師匠の言うことが絶対で、その指導は師匠の個人的な経験のみから引き出されており、他から検証されることもない。

 

そのことを、anarchyとかno principleと批判しています。

 

そのような教育を受けた生徒は、寝深い奴隷根性にとらわれてしまい、本来、芸術家にあってしかるべき人格やアイデアが育たないと言います。

 

デルサルトは、こうした体験を通じて、師匠によって相矛盾するバラバラの教育ではなく、芸術全てに通用する何らかの原理原則があってしかるべきだと考えるようになります。

 

(つづく)

 

Genevieve Stebbins “Delsarte System of Expression”

(著作権が切れているせいか、PDFで読めるようになっています)

 

Franck Waille “Corps, arts et spiritualité chez François DELSARTE (1811-1871) Des interactions dynamiques”

(フランスの大学の博士論文ですが、PDFで公開されていて大変助かります)

 

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この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

カテゴリー: アレクサンダー・テクニーク. タグ: .
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