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bodytune(ボディチューン)音楽家のための鍼灸

スキルアップに必要なのはパワーではなく可動性

" アレクサンダー・テクニーク "

2019年6月21日

「これをできるようにするにはどこを鍛えればいいですか?」

 

アレクサンダー・テクニークのレッスンでときどきこんな質問を受けます。

 

「鍛える」の意味によりますが、質問者の意図を察するに「ある特定のラインの動きをもっと高い負荷でできるようにする」というニュアンスが含まれているように感じられます。

 

ただ、今まであまり成功したことのないスキルだったらこれはどうなのでしょう。

 

うまくいくためには演奏に必要な体の部位が3次元上で適切な位置関係にいて動くことが重要であって、それには高い負荷は必要だろうかと考えます。

 

3次元上の位置というのは楽器に対しての体、体に対しての楽器という具合に相対的に動き続けるもので、タイミング(時間軸)を加えたら結局のところ制御の話になります。

 

運指であればその動きの系先端は指先、あるいはキーのふたやピストン、レバーになり、タンギングなら舌のどこか、それらがいつどうである必要があるのか。

 

力の要素が必要なこともありますが、3次元上の位置、動く方向、タイミングなど他の要素がかみ合っていなかったらうまく行きません。

 

難しいところにさしかかると人は緊張し動きが固まります。

 

名手の演奏を見て我々はつい肩がどうなってる、腕の角度がどうなってる、といった形が気になります。

 

でも緊張して動けない状態で形だけ鋳型のように維持しようとしてもかえって固まります。

 

必要なのは動けること=可動性です。

 

そして系先端が必要なタイミングで必要な動きさえしていれば、体のどこがどのように動いたとしてもそのラインは正直どうでもよいと言えます(分かってしまうと効率化してある幅におさまりますが)。

 

解剖学で体の仕組を学ぶのも、ボディ・マッピングで認識のうすかった体の部位を確認するのも、今まで使っていなかった動きのリソースを取り戻すためです。

 

動きのリソースを有効に使う体験が増えていくと、緊張したり焦ったりした時に固まるところが分かるようになります。

 

こういう固めを回避するのに総論、アレクサンダー・テクニークは使えるのです。

 

熟練の教師になると必要な動きのリソースがどれか見ただけで当たりがつけられるので、いきなりその部分の動きを促進するエクササイズみたいなことをやります。

 

それで「鍛える」という発想に結びついてしまうのかもしれません。

 

でも実際には今まで固めて動かなくしてたところを動かすのが目的で、やってみて動かせるのであれば筋肉はすでにあります。

 

だから筋トレというよりむしろ脳トレなんですね。

 

でもそうは言ってもという方のためにパワーが有効な場面についても考えてみました。

 

僕がサラリーマンだったころ、週末はランニングなどで鍛えている上司がいました。

 

平日はとても忙しくて終電、タクシーが当たり前。

 

タフな会議に決断事項が山のようにある職場でした。

 

日がな14時間くらい椅子に座って体起こした状態で冷静な思考を維持するのは、けっこう体力が必要です。

 

週末に走ると調子がいい、逆にそうできないと1週間がつらい、もたないと言ってました。

 

音楽家で言うと連日リハや本番が入るような多忙な方、ハードなプログラムをかかえる場合には似た感じがあるかも知れません。

 

技術はある、コンディションが恵まれていれば楽々とクリアする自信がある、でも終日かかるような公演やリハーサルの最後まで質を保つのが難しい、といった場合には技術を発揮する前提としての思考、体勢維持のための基礎体力を「鍛える」のはアリだと考えています。

この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

カテゴリー: アレクサンダー・テクニーク. タグ: , .
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