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bodytune(ボディチューン)音楽家のための鍼灸

ある頚椎とアンブシュア不調の関係

" 管楽器奏者のアンブシュア不調 "

2021年6月29日

遠方にお住まいのトロンボーン奏者の方がいらっしゃいました。初回が半年くらい前で今回は2回目。症状はアンブシュアの不調で吹いているとけいれんしたり息が漏れたりし、音が鳴らなくなるというもの。

 

施術前に吹いていただくと、半年空いたわりには改善した状態が保たれていました。前回の施術で吹奏感が変わったのをきっかけにご自身でも奏法を試行錯誤したのが良い方に作用しているようです。

 

自分に合った奏法は自分にしか分かりません。体のコンディションを整えて動作の調節が可能な状態にしてあげれば、あとは本人の力でうまく行くやり方に収れんしていく。いつも必ずそうなるわけではありませんがさりとてそんなに珍しくもなく、鍼をしているとわりと見ることです。

 

そう考えると鍼師の仕事は「どこの」動作を本人にとって調節可能にすれば良いか見極めて、そこを変化させることになります。そのためには症状や体の状態に応じてどこを調整するか知っている必要があります。幸い整動鍼では体全般の動きとツボの関係が明らかなので、これを演奏動作に応用して一つ一つ突き止めることができます。

 

タイトルに入れた「ある頚椎」というのは前回最初に調整して大きな効果を確認したところです。今回は逆にそこを残しておいて側頭筋や咀嚼筋など他のところの動作を先に調整しました。すると「ある頚椎」以外のところを調整しても効果はありますが「なんとなく全体として調子が上がった」という変化。ところが「ある頚椎」を調整してから吹くとアンブシュアを作る表情筋の張りがとたんにしっかりしたのが見てとれ、ご本人も「さっきよりまだ余裕がある!」と驚く結果になりました。

 

通常なら何本も鍼をした後のツボはあまり変化を出せません。一度ならず二度までも、それも不利な条件下で効果があったということは、少なくともこの方のアンブシュア不調に対しては「ある頚椎」がよほど重要と考えてよいでしょう。

 

実は「ある頚椎」の調整はタンギング不調にも良い変化をもたらすことが他の症例で分かっています。頚椎の調整と言いつつ、頚椎に鍼をするわけではありません。他の部位にあって頚椎に影響力のあるツボを使います。それが結果的にアンブシュアやタンギングに変化をもたらすわけです。自分でもわけが分かりませんが、人体にはまだまだ秘められた法則性があるのだと思います。

 

楽器の職人や調律師はこうすればこういう音が鳴ると予測して調整する技術を持っています。この予測可能性に関し鍼師はこれまでいまいちでした。しかし法則性を用いて技術を構築していけば、音楽する身体を調整する技術も同じレベルに上げられると確信しています。時を経て同じ人に同じ変化をもたらした今回の体験でその思いを強くしました。

この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

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