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経絡にふれない異例の古医書『医心方』

" 東洋医学 "

2019年7月5日

 

『医心方』(いしんほう)とは日本に現存する最古の医書です。

 

時は平安時代、宮廷に仕える医者、丹波康頼(たんば やすより)によって書かれ、984年に朝廷に献上されました。

 

丹波康頼

日本の医書と言いつつ、『医心方』は中国で著された重要医書からの抜き書きで作られています。

 

その意味では丹波康頼が書いたというより、編纂したという方が近いかも知れませんね。

 

にも関わらず、また現代の鍼灸師にとっては考えられないことに『医心方』には経絡の記載がありません。

 

鍼灸学校でこのことを聞いた時には、当時の日本の医学水準がその程度だったとしか思いませんでした。

 

僕だけでなくわりに多くの鍼灸師がそういう印象を持っていると思います。

 

でも科学史家の山田慶兒氏はこれを日本が中国の医学を導入する時に意図的にかけた「フィルター」であると言います。

 

そのことを「理論不信」「可視(可触)信仰」「実験ーみずから手を下し、実際にやってみて、その効果を確かめることーを標榜する」と著書『日本の科学 近代への道しるべ』(藤原書店)に書いています。

 

このフィルターが捨てたものは経絡だけでなく、五行論、虚実、補瀉の概念まで及んだと言い、同著書の後半で江戸期古方派(こほうは)の医家山脇東洋の言葉を引用しながら、日本的「フィルター」で中国医学受容を突き詰めた先を見ます。

 

「素・霊は医書たるのみ。陰陽歴術及び天地造化を説くの書に非ず。但だ人身上に就きて論を起こし、医薬上に向いて用を受くる者にして、何の故に更に旁広く天地の理を論ぜんや」

 

「素・霊」は古典的治療法を行う鍼灸師にとってはバイブルともいえる古典『素問』(そもん)と『霊枢』(れいすう)です。

 

『素問』や『霊枢』を否定せんばかりという、、江戸期の医家はなかなかすごいことを言います。

 

おそらく当時の医家は陰陽や五行といった東洋医学の重要概念そのものを議論の対象としていたのでしょう。

 

現代の我々はそれがあることは所与として、いかに解釈・運用するかだけが検討の対象です。

 

真正面から否定するのはちょっと勇気がいります(現代医学的立場にたって「無視」はできますが)。

 

ただ、例えば五行論について、鍼灸師は人体の生理・病理の説明原理として捉えるのが普通ですが、もともとは中国の王朝交代において新しく建った王朝の正統性を説明する原理としても使われたことを想起したらどうでしょうか?

 

もちろん森羅万象を説明する自然哲学の一部として王朝交代を説明するに過ぎないと言うのは可能ですが、時の最高権力者の正統性と関わるとしたら現実の人間社会においてこれが「科学」たりうるか?

 

なかなか興味深い問いではあると思います。

 

山田慶兒氏の立場はしかし日本で発展したこうした「理論不信」「可視(可触)信仰」の医学のありようを手放しで礼賛するものではありません。

 

「理論的な支えを失えば、臨床技術はばらばらな断片の無秩序な、そして恣意的な適用を許す、集まりにすぎなくなるだろう。」

 

理論なき処方の寄せ集めは継承・発展という意味ではおそらく致命的でしょう。

 

理論はやはり必要です。

 

しかし実証や検証がおろそかにされて理論のみ先行して医療がなされたらどうなるか?

 

次回は同氏の別の著作『気の自然像』(岩波書店)に描かれたもう一方の極を紹介したいと思います。

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この記事を書いた人

2016年、東京練馬区の江古田にてbodytune鍼灸マッサージ院を開業。

鍼灸師、マッサージ師。アレクサンダー・テクニーク教師。

 

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