東京都練馬区の音楽家のための鍼灸とアレクサンダー・テクニーク

整動沼にはまる

" 整動鍼 "

2020年10月15日

当院には指の不調に悩む音楽家が多く来院されます。

 

演奏家にとって手は商売道具ですから、できれば手に鍼を入れて欲しくないという人も中にはいらっしゃいます。

(実際には手にも安全に鍼できるのが鍼灸師です)

 

整動鍼を知る前にそんな患者さんを見ていたあるとき偶然使った大椎(だいつい)で指の不調がきれいに良くなり、へー!と思いました。

当時お世話になっていた中医系の先生から「大椎は首を通るすべての陽経をぶちぬく」と教わっていて、たまたま使ってみた経穴(けいけつ)でした。

 

また「夾脊(きょうせき)は督脈(とくみゃく)の経穴の代わりになる」とも聞いていたので、その後しばらく指の不調に督脈と夾脊だけで取り組みました。

 

何人か見るうちに大椎とその横の夾脊だけでは対応しきれないことが見えてきます。

 

そこで大椎と同じ督脈上と夾脊をていねいに探って硬く緊張したところに鍼をしてみたのです。

 

多くは身柱(しんちゅう)またはその夾脊でこれがわりと効きました。

 

身柱の外方には肺兪(はいゆ)があります。

 

たまたま小児喘息の既往がある方が続いたことから五臓の肺との関係を考えました。

 

そういえば大椎の横の夾脊は定喘(ていぜん)とも呼ばれていて喘息の特効穴です。

 

それからは来る患者さん皆に「喘息やったことありますか?」と聞くようになります。

 

しかし喘息もなければ風邪もあまりひかない例が多くてまた分からなくなりました。

 

また夾脊のライン上ではあるものの、普通の位置(脊椎の棘間の高さ)でないところが硬くなっていることも多く、そこに鍼をしても指の不調が良くなります。

 

習った経穴と関係ないところを使うのは邪道に感じてとても嫌だったし混乱しました。

 

理論がおかしいのか、解釈がおかしいのか、あるいは自分の腕が上がれば理論どおりで効果が上がるのか、ではその場合の「腕が上がる」とは何なのか、考えても分からず気持ち悪い思いをかかえていました。

 

硬く緊張したところをとにかく探して鍼をするだけなら理論も腕もありませんが、実際にやってたのはそういうことでしたから。

 

そしてこちらの症例に当たります。

 

来院者

女性 40代 フルート

期間

2018年11月

症状

アマチュアでフルートを演奏していて、左手親指が動かしづらく特にトリルで指が固まって動けなくなる。左手親指は他にも開きにくいなどの症状があり、テレビのリモコンやスマホの操作がやりづらい。

痛みやしびれもあり、病院で頚椎ヘルニア、手首TFCCの診断を受けている。右手も痛みやしびれがあるが、動かしにくくて困るのは主に左手。痛みは右肘が特に顕著。

また呼吸時に左肩甲骨下あたりが痛む。

症状

アマチュアでフルートを演奏していて、左手親指が動かしづらく特にトリルで指が固まって動けなくなる。左手親指は他にも開きにくいなどの症状があり、テレビのリモコンやスマホの操作がやりづらい。

痛みやしびれもあり、病院で頚椎ヘルニア、手首TFCCの診断を受けている。右手も痛みやしびれがあるが、動かしにくくて困るのは主に左手。痛みは右肘が特に顕著。

また呼吸時に左肩甲骨下あたりが痛む。

施術と経過

試みにリモコンを左手で持って操作してもらうと、親指の第1関節が伸展、第3関節が動かないまま第2関節だけを動かしていた。他動的にそれぞれの関節を動かしてみると特に痛みなどはなく可動性にも問題は見られなかった。フルートの演奏でもその指の形は変わらず、トリルができない状態だった。

全身の動きに目を向けると特に鎖骨・肩甲骨が動いておらず、腕の動きとの協調をもっとよくする余地があるように見えたので、座位のまま左肩甲骨付近のツボに鍼をしたところ、直後から左手がぼうっと温かくなったとの感想。

再度フルートを吹いてもらうと、さっきできなかったトリルが問題なくできるようになった(ただし長く続けると少し動きが固まってくる感触あり)。親指の第1関節と第3関節も動きに参加し始めているのが見て取れた。

観察を踏まえて、鎖骨・肩甲骨を含めた上肢帯全体の動きを改善し、また全身にやや緊張気味だったのでテンションを落とす方向でのツボを選び、施術した。

施術後、左手親指の動きが改善し、右肘の痛みは肘下前腕の半分くらいまで感じていた痛みが肘までに後退した。

施術と経過

試みにリモコンを左手で持って操作してもらうと、親指の第1関節が伸展、第3関節が動かないまま第2関節だけを動かしていた。他動的にそれぞれの関節を動かしてみると特に痛みなどはなく可動性にも問題は見られなかった。フルートの演奏でもその指の形は変わらず、トリルができない状態だった。

全身の動きに目を向けると特に鎖骨・肩甲骨が動いておらず、腕の動きとの協調をもっとよくする余地があるように見えたので、座位のまま左肩甲骨付近のツボに鍼をしたところ、直後から左手がぼうっと温かくなったとの感想。

再度フルートを吹いてもらうと、さっきできなかったトリルが問題なくできるようになった(ただし長く続けると少し動きが固まってくる感触あり)。親指の第1関節と第3関節も動きに参加し始めているのが見て取れた。

観察を踏まえて、鎖骨・肩甲骨を含めた上肢帯全体の動きを改善し、また全身にやや緊張気味だったのでテンションを落とす方向でのツボを選び、施術した。

施術後、左手親指の動きが改善し、右肘の痛みは肘下前腕の半分くらいまで感じていた痛みが肘までに後退した。

使用したツボ

天髎L、膈兪L、肩中兪R、厥陰兪R、身柱、神道

使用したツボ

天髎L、膈兪L、肩中兪R、厥陰兪R、身柱、神道

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>>背中のツボでフルートの左手親指のトリルを改善

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膈兪(かくゆ)と書いていますが実際にはもっと外側で本来経穴でないところに鍼をして、直後に親指の動きが大幅に改善しました。

 

結局、背中の硬く緊張したところを探して鍼をしたら指って良くなるのか?

 

でもそれだけじゃあまりにも芸がなくはないか?

 

脈診をする鍼灸師の間ではこう言われています。

 

「もともとの脈診は全身の動脈拍動部を確認していたが、高貴な人(皇帝など)は手首しか触れさせてもらえないので橈骨動脈だけで脈をみる技術が発達した。」

 

そして経穴も肘から先、膝から先を重視する考え方が主流です。

 

ということはこうも言えないかと考えました。

 

手足だけで施術を済ませる技術が後から発展した高等技術だとしたら、体幹(特に脊椎)を使う技術が先に発展していてかつ基礎的と見なされていたんじゃないか?

 

基礎的な技術ほど出来て当たり前、わざわざ書き残す必要がありません。

 

書いたとしても「そんなの常識でしょ」で終わってしまうからです。

 

せっかく書くならアクロバティックな応用技、みんなが驚く最新の発見というのが人情。

 

ところがここに落とし穴があって、現代でも最新の科学論文はほとんどが数年後には再現不可で否定されます。

 

反対に出来て当たり前の基礎的な技術は誰がやっても同じ結果になり堅実だけど面白くないし、書く価値もない。

 

だけど使ってないわけではないのです。

 

むしろ日常的によく見られる症状にまず使われるのはこういう技術のはずです。

 

鍼灸の古典がどうなのかは分かりません。

 

でも整体や欧米の徒手療法にも脊椎を重要視するものが多く見られますし、脊椎の調整って素朴な治療技術がどれもわりと初期に通る道だったんじゃないかと思ったわけです。

 

そして僕にとって好都合だったのは音楽家の患者さんにはまさにそれが合っていたこと。

 

基礎的で堅実なら効果が手堅いんだからなおさらいいじゃないですか。

 

だからどんな時にどのツボを使うか法則が明らかならいいのにとずっと思っていました。

 

そういう関心を持ちながら去年、整動鍼のDVDを見て背部1.5線を知り、入門編セミナーで2~4線を知り、四肢編で1線の使い方を知りました。

 

手指との関係もだいぶ解き明かされたし正直これで全部かなと思っていましたが、しかし先日出た「応用☆五体躍動編」はもっとすごかった・・・

 

たとえば夾脊を使っていたころ、患側と逆の夾脊が硬いことがしばしばあって不思議に思っていたんですね。

 

そんな一見ランダムに見える現象もきちんと法則があることを今回初めて知りました。

 

あれほど気持ち悪いと思って書いていた当時のカルテが今なら美しく見えます。

 

聞くところではこういったツボと人体の法則性、まだまだ出し惜しみ(?)してるものがあるみたいです。

 

去年からはまり続けている整動沼、なかなか抜けられそうにありません(笑)

この記事を書いた人

2016年、東京練馬区の江古田にてbodytune鍼灸マッサージ院を開業。

鍼灸師、マッサージ師。アレクサンダー・テクニーク教師。

 

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