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腱鞘炎

腱鞘炎とは?

腱鞘とは健の通り道です。腱鞘はちょうどマカロニのようなかっこうをしており、中がトンネル状になっています。

 

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Gray’s Anatomy 1918年版をもとに作成

指を動かす筋肉の多くは肘から手首の間にありますが、これらの筋肉は末端にいくとヒモ状の腱に変わります。手首のあたりから先は完全に腱の状態で手の中を通り、最終的に指の骨につきます。

筋肉が収縮して腱を引っ張ることで指を曲げることができます。その際、腱が浮き上がってこないように通り道をガイドするのが腱鞘の役割です。

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手のひら側の腱鞘(Gray’s Anatomy 1918年版をもとに作成)

手以外のところにも腱鞘はありますが、腱鞘炎が起こるのは主に手です。指、手のひらの中、手首に腱鞘があって、手のひら側と手の甲側の両方で腱の通り道を作っています。

下の図は、指の骨と腱、腱鞘の関係を表しています。

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水色の部分が腱鞘、赤いのが腱

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腱鞘がないと腱が浮き上がってしまいます

 

こんな仕組みなので、指の曲げ伸ばしを繰り返すと腱と腱鞘に摩擦が生じます。摩擦の結果、炎症になってしまったのが腱鞘炎です。

手を使う楽器すべてにそのリスクがあると言えますが、やはり細かい動きの多い弦楽器、ピアノ、木管楽器の奏者に多いでしょう。

 

症状

手のひら側の指の付け根や親指の根本が痛むことが多いですが、手の甲側に痛みが出ることもあります。腫れや熱感をともなったり、動きが悪くなることもあります。親指の根本が痛む腱鞘炎を特にド・ケルバン病と呼び、弓を使う弦楽器奏者の右手に起こりがちです。

 

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腱鞘炎の起こりやすい部位

初期は演奏中あるいは演奏直後に痛みを感じるものの休息を取れば痛みがひきます。指の曲げ伸ばしや手首を曲げたりした時に痛みやすいですが、痛みが起こるのが瞬間的で次の瞬間には消えていることも多くどこが悪いのか自分でも分からないこともあります。

症状がすすむと痛みが持続するようになり場所もはっきりしてきます。さらに慢性化、悪化するとドアノブを回すとかペットボトルのふたを開けるなどの動作でも痛みを感じ、日常生活にも不自由を感じるようになります。

まれにですが、痛みを感じないまま症状がすすんで指の動きが悪くなったことで気づくこともあります。

原因

一般的に手の使い過ぎが原因と言われています。とは言え、同じように長時間演奏してもなる人とならない人がいますので、なりやすい人のタイプがあるようです。

例えば、女性の場合はホルモンとの関係で妊娠、出産、更年期には特に腱鞘炎になりやすいですし、また、冷え症で手が冷たい人もなりやすいと言われます。

そういった性差や個人差もあり「使い過ぎ」のレベルはさまざまですが、練習量・演奏量を急に増やした、楽器を変えた、弦楽器であれば左手の押弦が強すぎる、ウォームアップなしにいきなり弾き始める、なども発症のきっかけとなり得ます。

対策

1.意識的に手を休める時間を取る
リハーサルなど自分の都合で休めない状況もありますが、休憩時間にさらうのは今はやめておくとか、合奏中も力半分で他の楽器とのからみの確認に専念するとか、いい意味で手を抜きましょう。状態を悪化させない、本番でより良いパフォーマンスをするための割り切りも必要です。
2.ウォームアップをこころがける
スポーツではケガ予防のために準備運動を行います。楽器演奏でも軽いストレッチなどで腱鞘炎の予防になります。
アマチュアで週末にしか楽器に触れない場合、練習会場でいきなり弾き始めることも多いと思います。移動の間にできることを探してみましょう。手首のストレッチや指を軽くもむ程度でも良いウォームアップです。また、寒い冬にはカイロなどで演奏前に手を温めておくのもおすすめです。
3.疲れたら手をよくもむ
手にたまった疲労物質を早く排出して栄養を送り届けることで予防にもなりますし、腱鞘炎になってしまった後の回復も早めます。ただし、痛みが激しい、腫れや熱感がある場合には逆効果もあり得ます。そのような場合はひかえてください。
4.こまめに水分をとる
体の水分が不足すると筋肉の働きや関節の滑らかな動きがそこなわれます。こまめに水分をとることで予防につながります。
5.運動の習慣をつける
腱鞘炎になりやすい人の中には冷えを訴える人も多いようです。ジョギングなど適度な運動で普段から体を動かし代謝を上げることで冷えを解消すれば、間接的に腱鞘炎の予防につながります。
6.奏法を見直す
力みから腱鞘炎につながるケースも多いです。
望む音を出すのに必要な力がどの程度か、腕全体の使い方としてもっと効率的な力の入れ方はないか、などなど奏法を見直すことで症状が起こりにくくなります。ただし、築き上げてきた技術や弾き癖を作り直すには勇気が要りますし時間もかかります。以前できていたことができなくなったり、なかなか効果が表れない時に気持ちまで落ち込んで出口の見えない迷路に入り込むことがあるかも知れません。
そうした状況では、独りで抱えこまずにアレクサンダー・テクニークなど、動きの専門家のアドバイスを得ながら取り組むことをおすすめします。第三者の視点が入ることで、自分が改善のステップを踏んでいるかどうか客観的なフィードバックを得ることができ、進むべき方向性について大きな勇気づけになるでしょう。

 

参考文献

上羽康夫:手 その機能と解剖 第6版, 金芳堂, 2017

根本孝一・酒井直隆(編著):音楽家医学入門, 共同医書, 2013

Healthy String Playing, Hal Leonard, 2007

 

関連ページ:

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腱鞘の解剖学(5)ー腱鞘炎のメカニズム

腱鞘の解剖学(4)ー腱鞘炎のメカニズム

腱鞘の解剖学(3)ー腱鞘炎のメカニズム

腱鞘の解剖学(2)ー線維鞘と滑液鞘

腱鞘の解剖学(1)

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